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ブラインドネス

2012年9月25日(火) 曇り by キヨタカ

 「見ても見ず、聞いても聞かず」とは、キリストの有名な言葉であるが、その言葉は教えと言うよりも目が見える賢者であるが故の「嘆き」に近いものがある。

「悟れば悩みがなくなる」と思う人も多いが、実際は違うかもしれない。

確かに、目が見えない事による個人的な悩みは終わる。

しかし目が見える様になると別な悩みが始まるらしい。

それは目が見えない人々に対する悩みであり、見えるのに見ようとしない人々を救えない嘆きの方がはるかに深いだろう。

ではどうやって、見ても見ない人を救うか?

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もっともダイレクトな方法は、実際に一時的に目を見えなくする事だろう。

それが非常に熱心で過激なユダヤ教徒であったパウロの身に起ったと言う。

キリスト教徒を迫害するためダマスコへ向かう途上で、突然キリストに呼びかけられ、目が見えなくなってしまう。

盲目の中で彷徨うパウロに対して、キリスト教徒のアナニアが神のお告げによりパウロの為に祈ると目から鱗のようなものが落ちて、再び目が見えるようになる。

まさに「目からウロコ」が落ちたパウロは、改心して聖者となりキリスト教発展の基礎を作った。

そんなキリスト教的バックグラウンドを下地に描いた映画:ブラインドネスを見た。

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「全世界失明〜恐怖の伝染病、地獄と化した街、生き残るのは誰なのか」と、典型的なパニック映画風に宣伝されているので、その手の映画を期待すると裏切られる事になる。

失明の原因が解明されないまま終わるので、謎解き映画を期待する人もがっかりする。

さらに、人間の極限状況の暴力やエロスも抑え気味ながら描かれていて、「えぐい」描写も多い。

だから、好き嫌いが極端に分かれる映画だろう。

まさに、英語の「provocative 〈言動などが〉人を怒らせる; 物議をかもす」という表現がピッタリの映画だ。

しかし最後は、救いと癒しがしっかりと描かれているので、謎解きを期待しなければ後味も爽やか。

映画の中にスピリチュアルなメッセージを読み解く事が好きな人にとっては、必見のおすすめ映画だ。


目が見えない絶望と再び目が見える事の喜びは、人生を根本的に変容させる衝撃的体験だ。

実は、私にもそれに近い事が起こった体験がある。
失明に対する恐怖だ。

小学生の時からあまり視力は良くなかったのだが、中学生の頃から少しづつ視界が悪くなった。

高校生になると次第に視力が失われ、失明の恐怖に怯える日々が続いた。

手術すれば治るという事は解っていたのだが、当時の技術では失敗の可能性が高く、どの医者も手術を引き受けてくれない。

一途の望みを託して全国の名医を探し、ようやく奇跡的に名医のW先生と巡り合い、リスクを犯して手術に踏み切ってくれた。

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手術後初めて眼帯を外して、景色を眺めた時の驚きと感動は今でも脳裏にしっかりと焼き付いている。

青い空、白い雲、赤い花に緑の木々…見るもの全てがサイケデリックで活き活きとしている。

それまで地獄の日々だったので、あたかも天国が訪れたかの様だった。

「目が見えれば 他に何も要らない。このままで幸せだ!」と、しみじみと目が見える喜びに浸った。

しかも、遂に巡り会って手術をしてくれたW先生が、実は小学一年生の時に最初に診察してくれた方だった。父の勤務する会社の診療所に来てくれていたのでいつでも会えたのだが、そんなに優れた名医だとはつゆ知らず、他の名医を求めて全国を彷徨していたのである。
長い間探し求めていた青い鳥を自宅で発見した様な、とてもミステリアスな感動があった。

しかし、一週間もするとその感動が薄れ始めてしまい、一ヶ月もするとその感動の痕跡すらなくなってしまった。

目に衝撃を与えない様に激しいスポーツが禁じられ、少年時代からの憧れだった柔道部を辞めざるを得なくなった。

そこで勉強に打ち込もうとしても、入院中に授業が進んでしまい、落ちこぼれそうになり焦りだけが募った。

手術で目が見える様になった喜びよりも、手術しなければならなくなった境遇を嘆く様になってしまった。

せっかく手術で目からウロコが落ちたのに、いつのまにか再び目に貼付いてしまったのである。

もし当時、パウロみたいに本当に失明していたら、再びウロコが貼付く事も無かったのかもしれない。

しかし、ウロコが剥がれた時の感動だけはしっかり脳裏に刻まれていたお陰で、あの感動を再び取り戻すべく、スピリチュアルな探究が始まった。

そしてそのウロコを剥がす最良の方法として、瞑想というものが与えられたのだから、随分と回り道をしてしまったけれども、私の場合はそれで良かったのだと今は納得している。

 

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